その他の短歌

第四紀完新世の沖積層圏界面まで飛ばす水爆

エンジンの馬力について考える空想上の馬がうごめく

こころ:馬力という換算単位はワットが蒸気機関のセールスのために発案した。馬が荷役の主役だった時代には、馬の例えは生活の感覚のうちにあり、したがって通常の単位よりも換算単位を用いる営業上の動機がうまれたのである。しかし、現代に生きる私たちにとって、馬一頭の出す力はイメージしづらい。私たちが馬力の単位を読むたびに、少ない経験から、馬一頭が力の限り走る姿を空想するのである。

パッケージマネージャのためパッケージマネネージャのためパッケージマネ

こころ:パッケージマネージャのインストールの手順に別のパッケージマネージャのコマンドが使われていていつまでたっても目的のパッケージが手に入らないことを詠みこんだ

「Aのインストール手順でBが無いと怒られる、Bのインストールページにいく、「Bは〜のコマンドですぐにインストールできます!」と書いてあるコマンドを打つ、Cというパッケージマネージャがないと怒られる、Cのインストールページに行くとUnix系でしか使えないとわかる…のようなことがよく起こる」
- https://twitter.com/Mikanixonable/status/1689943702209527808


消しゴムが使い切られて消えるのを本当に見た人間はいない

雨村(あまぞん)の露もまだ干ぬ荒草(あれくさ)に霧立ち上るvaporwave

あをによし奈良の小鹿の出すうんこ例年に比し丸(まろ)くなりけり

汎用下の句

久方の光のどけき春の日にメイクアメリカグレートアゲイン

古池や蛙飛び込む水の音内閣官房副長官

汎用下の句を強引につけたもの

RTして何度も蘇生させられ続ける1回きりの発言

RT(リツイート)とは遡及的に押し付けられる拡声器であると表現している人がいた
https://x.com/LicjarXeymelloz/status/1609749519583055872?s=20
そればかりか、RTは時間を超えて一つの発言を響かせ続けることができる。誰かが発言を覚えて時折RTしてくれるおかげで、私たちはツイッターを始める前の名ツイートを目にすることができる。

しかし、それは必ずしも良いことだけではないかもしれないというネガティブな含みを「蘇生させられる」と表現している。地震が起こるたびにRTされることで恒例な竹達彩奈さんの「や、おっぱいは揺れてないからね(笑)」
https://twitter.com/Ayana_take/status/162076119531667457
というツイートは、何度も蘇生され続けるツイートの例である。

日本語以外の言語で詠まれた短歌

language is a nomadic existence
you can never comprehend

言語とは、はかりしれないものである

I don’t know how to
but I have to do something
irritation
social filter
meow meow meow meow meow

社会性フィルターとは、日本のツイッターでツイートすると汚い言葉を自己規制するときに使われる言葉である。社会性フィルターを通すと、暴言や愚痴はすべてかわいらしい猫の鳴き声になる

soweli lon
lukin pona mute
ala kiwen
pilin mi lon musi
kama kepeken ni

わずか120語からなる人工言語、トキポナで詠まれた短歌。soweliとは、かわいい生き物という単語で、そのほかの動物akesiと対比される。日本語訳すると「かわいい動物がいる。とても良く見える。柔らかい(硬くない)。私の気持ちは楽しくなる。その動物が来る。」
といったつもりだが、トキポナの作文経験がないのでたぶん間違っている。

トキポナ/辞書

本を積み本に積まれて部屋の隅
崩れて今朝は物を思う頃かな

雪玉の衣を剥がす太陽風
大彗星は夢のまた夢

靴底をこすらせ鳥の鳴き声を
淡々と出すバスケの朝練

シャーペンの芯を詰めかえ消しゴムの中央についた黒点を見る

わいはいの電波に乗りてツヰィトは電子の海に旅立ちにけり

自由律

冬の小径にこぢんまりとした前頭葉が在る

大昔、インターネットの鳥がいてピーヨロヨロ、ピーヨロヨロと通信料金ついばみました

咳をするロリ

言うまでもなく「咳をしても一人」の本歌取り

咳をすればジロリ

「咳をしても一人」を本歌取りし、covid-19流行下での肩身の狭さを表現した。n番煎じ。

ふとんすいしてふとんすいするといつのまにかじぶんがすってるのかじぶんがすわれてるのかわからなくなりつつ

系外惑星短歌

鳥たちが夜明けとともに空覆うメタンの風と2つ目の月

友軍機台風に消え夕闇が数分で迫る赤斑の上

その他の短歌

法華経の文字一つずつレーザーで宇宙に放つ人工衛星

仏教のもつ巨大な時間スケールを、宇宙という舞台で表現した。

イケアさめイケアさめさめイケアさめイケアさめさめイケアさめさめ

さめぬい


ランディングチェックリストコンプリート船尾にショックダイアモンド

秋風をシュッと断熱圧縮し堂々凱旋オウムアムア

どうもりのかぶの値のはかなきに恋ふらく難き人の世だなも

こころ:どうぶつの森のかぶの値段のあっけなさではないけれども、恋愛のすることの難しい人の世であることよ(詠嘆)

秋風に棚引くお布団の絶え間より
漏れいづるツイート生えるヌム稲

こころ:「ヌム稲」とは、競プロ界隈で2017年ごろに使われていた「眠い」を表すジャーゴン。紫式部の有名な「秋風に」の句を本歌取りし、魔剤で眠気を飛ばす現代の若者を詠んだ

人生の残り時間を賃金にちぎっては替えちぎっては替え

無産階級の叫び

王様の耳はうさみみ東京を
眼下に望みソニックブーム

もるひねのけしの刈り目のあらなくに妹思う我もらりれり

ぬばたまのブラックリブズダークマター、メイクアメリカグレートアゲイン

まくらすうまくらすわれるまくらすうまくらすいすい無限の応酬

関数の直交性で何もかも剥がして重ねて剥がして重ねて

USB-C不対応の稲妻のスマホバキバキスマホバキバキ

満月のウミユリ揺れる海の底ぼこぼこ爆ぜていくpillow lava

三万人、体ふるわせ手足振る、畏きねこのご到着

すめらぎのまくらのすめる吸い初めて、みすきー住まう住之江の月

7年の眠りから覚め立ちくらみ窓の外には緑色の球

箱の中可逆機関を逆向きにつなげて流す永久のお仕事

ザンジバル沖で目にした浮遊物怪光放ち水柱上げ

なまこぬいなまこぬいぬい朗らかな挨拶交わす令和の嬰児

その筋の話によれば昨夜未明ねこがなまこになったそうだ

液タブの画素がきらきらきらめきの光に飲まれ二次元の国

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